その2
いろいろな2A3計測してきましたが何か肝心なことを忘れているような気がして、ふと思い付きました。そうです。ご本家RCAの2A3をまだ計測していないではありませんか。

しかしRCA製の2A3はいまだにとても人気=お値段が高く、別段欲しくも無いのに計測のためだけにあえて購入するのは全然気が進みませんでした。

とはいえ今回はそのような事を言ってる場合ではない様子ですので、思い切って2本購入する事とし、あらためて計測したのが下のグラフです。すると・・・・


     

     


な、な、なんと2本ともフィラメント電圧が2,5Vなのに(と書くのも変だが・・・)ループ特性が全く発生せず、実にしっかりしているではありませんか。

しかも1,8Vではそれがそのまま横に寝て、「とりあえずフィラメン電圧が下げられた為こうなったけれど何か?・・・」とでも言っているようです。

「恐れ入谷の鬼子母神」とはまさにこの事でしょう。RCA陰謀説敗れたり!!。しかし何故このような違いが出たのでしょうか。まず考えられるのはフィラメントの材質の違いにあると推測しました。

つまりRCAのフィラメントは充分なワッテージ=熱容量を以って温度が上がり過ぎないようにし、さらにその温度で充分なエミッションが出るような工夫(例えば表面加工)がなされているのではないでしょうか。

フィラメントの熱容量が大きいと交流点火時に温度が安定し、温度によるヒーターハムも出にくくなるはずで、ハムバランサーの有効性が増します。

そこでさらにフィラメント電圧を1,5Vまで下げたらどうなるのかを計測したのが下のグラフです。曙光電子製のようにいきなり電流は減らず、健気(けなげ)にエミッションを出そうとする「しなり」から、カソード性能の優秀さが良く判ります。。


       

       


それならば逆にフィラメント電圧を2,8Vまで上げたらどうなるのか、実際に点火してみるとかなりフィラメントが明るくなり、まるで悲鳴を上げているようですが、心を鬼にして計測したのが下のグラフです。


       


若干カーブが持ち上がるもののしっかり動作していて、もはやあっぱれとしか言いようがありません。外観的にはあまり違いが無いようでも、そこには一流のノウハウが詰まっている気がします。

それでも過剰な期待感、あるいはスピーカーとのマッチングからか「憧れのRCA製2A3を使ってアンプを作ったが、それほどでもなかった。」といった記載があり、本当にオーディオは難しいものだと思ってしまいます。

例えば手間隙掛けて作ったシングルモルトウィスキーよりも、アルコールにカラメルやら何かを混ぜて作った偽ウィスキーの方がパンチがあってウマイ!というのは、好みの世界では仕方の無い事なのです。

このような実験を行った結果、今回は「2枚プレート型2A3(ご本家RCA製を除く)シングルアンプ作り」という、ちょっと変な企画になります。

最後に今までとは一風変わった傾向の特性を載せておきましょう。これは落札した古〜いアンプの中にたまたま1本入っていたもので、本当はレトロなケースが目当てでした。


        



       

       


実はこれ、日本のマツダ製2A3なのです。そしていかにも日本人らしく、きっちり定格で使わないとダメな事がグラフから読み取れます。

ちなみに定格どおりに使った時、カーブの優秀さは最高レベルで、日本人の勤勉さがうかがえます。マツダの2A3はお「宝の逸品」と言って良いでしょう。お持ちの方は大切に・・・。

ということでアンプの実作に入ります。

つづく





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